雑記や創作状況など。
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◇挿絵掲載◇「金色の螺旋」挿絵追加しました

 

珠帝と魁斗の間で悩み苦しむ朱雀(紅燐)が、瑠璃に誘われて黒いのに会いに来る場面です。

 

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 芳烈ほうれつな香りを散らす桂花の下、一人の美童が立っていた。黒漆の髪と瞳、白く冴えた顔は非常に麗しく、華奢な体付きからか少年にも少女にも見える。人間でいう歳の頃は十三、四で、丁度大人へと変わり始める頃といった所だろうか。

――人ならざる者。
 此の子供は人ではないと、一目いちもくで確信する。此れ程の美貌が、人として存在するはずが無い。斯様かような美を神々が人に許すはずが無いという、何の根拠も無い直感が頭を走り抜けたのだった。
 美しさ、だけではない。周囲の空気が、風が、異質だった。時折『彼』の頭上から舞い降りて来る乳白色の花が、葉が、彼の身体に触れること無く一瞬にして消失してゆく。目に見えぬ炎で焼き払われ、灰すら残さずに滅しているのである。
 無垢なる少年の姿をしているというのに、穏やかな表情で微笑すら浮かべているというのに、対した者に懼れを抱かせ威圧する。無機質で生気の宿らぬ闇色の双眸そうぼうが、矮小わいしょうなる人の子の心を暴き、抉り、暗黒に引き込んで突き落とす。慌てて目を逸らそうとしても、既に遅い。一度向かい合ってしまえば彼の虜囚として捕らわれ、其の美に魅了されて魂を奪われるか、恐怖に竦み動けなく為るかのどちらかと為る。

 

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変態な黒いのは、惑わす相手に応じて姿を変えるのですが、この日の気分は子供の姿だった模様です。

紅燐が神である黒いのを見て、一目で「人ではない」と気づいたという場面を、拙い語彙で頑張って表現しようとした記憶があります。

 

個人的に、こんなにかわいい容姿の黒いのが、この後のくだりで結構ひどい発言をしてるギャップが萌えです。

このへんです。

「卑怯で、醜悪で、純粋で……愛おしい程愚かな女」

 

黒いのはほとんどの人の思考を読むことができるので、紅燐に全て話させる必要はないのですが、それでも話させるのが彼の狡猾なところです。

話したくないことをわざと話させて、相手をコントロールするのです。変態だな。

 

 

あと、この記事を見てくれた人への感謝として、ちょっとしたネタバレです。

黒い人のこの中二病発言は、本心ではありません。嘘です。

「惓んで倦んで、仕方が無いんだよ。何かを望む人間が居れば与えて奪う。面白ければ、何でも好いのさ」

以前黒いのは蘭麗相手に「僕はうそをつくこともある〜」と言っていますし。

 

桂花の花弁が落ちて、黒いのの美しさを際立たせているシーンを、いつもながら職人豊代氏が綺麗に描いてくれました(●´ω`●)

この優しくも残酷な微笑の奥に隠れている本心を語れるのは、いつになることやら…(´◉◞౪◟◉)

 

 

 

掲載箇所は下記のとおりです。

*小説家になろう「金色の螺旋」第八章2話

 

 

*pixiv「豊代さや氏作品一覧」

 

 

 

 

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◇挿絵掲載◇「金色の螺旋」挿絵追加しました

 

ぐへへへへへへへへ(´◉◞౪◟◉)(´◉◞౪◟◉)(´◉◞౪◟◉)

 

瑠璃たんと黒いのです。

可愛すぎて昇天して転生しそうになりました。

 

真面目に解説すると、

「緑鷹を珠帝から奪え」という命令を黒神から受けておきながら、情が移ってなかなか完遂できていなかった瑠璃たん。

緑鷹様が死にたがっているのに気づいたものの、彼が蘢くんに殺されそうになっているのを見ていられず、黒神の言いつけを破って助けに行きます。

黒神よりも緑鷹への思いを優先させた自分が怖くなり、そして結局緑鷹を自ら殺めた傷が深すぎて、

どうしようもなくなって黒神に救いを求めに行く(=やっぱり自分は黒神に従うしかないし、そうするのが至福なのだと確かめに行く)場面です。

 

 

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 瑠璃が、神巫女としてではなく一人の女として黒神を欲していることを、彼が知らぬはずが無い。にも拘らず、此の残酷なる邪神は、献身的な美貌の下僕しもべを一度も抱こうとしなかった。其れどころか、欲望の欠片すら見せたことが無かった。
 こうして身体と身体をぴたりと付けて、愛欲に浮かされた物欲しげな眼差しで彼を見詰めてみても、生気の無い黒曜石の瞳は何の光も宿さない。低俗な妖や人間の男だけでなく、彼の異母弟おとうとである妖王をも誘惑する瑠璃の『女』を以てしても、彼を揺り動かすことは出来ない。
如何どうしたの、今日は妙に煽るねえ。あの男が死んだから、寂しいの?」
 心なしか愉快そうな黒神の言葉に、瑠璃は我に返る。そして、無意識とはいえ主に対し、あんな視線を向けてしまったことを酷く悔やんだ。

「申し訳ございません」
 何時の間にか主の首の後ろへ伸ばしていた両手を引くと、瑠璃は思わず俯いて目を逸らす。
「あの男が気に入っていたのだろう。珍しく君を悦ばせたから? 其れとも、君を愛していたから?」
「あの方のことは、何も」
 自分を試すかのような問い掛けに対し、瑠璃の口から漏れ出たのは『偽り』の答え。黒龍は其れを咎めようとはせず、彼女のしなやかな髪を、細い首筋を、長く形良い指で撫でた。
「君のそういう所が、とても好い。脆く弱い一面を引き出して遊ぶと、少しも退屈しない」
 痺れるような美しい声で耳打ちされると、瑠璃の肩が跳ねる。珠帝や青竜将軍を前にしても怯むこと無く、あの緑鷹をも虜にした瑠璃ですら、此の邪神の前では無力な少女同然。仕草一つ、言葉一つで自在に反応を操られてしまう。
「そんなに震えなくても良いよ。君は何時も通り、僕を満足させてくれたし……其れに、ねえ? あの男にだって、彼の望む死を与えてやったじゃない」
 黒神は、再び瑠璃に深く口付けた。身を駆け巡る快感と甘い蜜の如き囁きで、彼女の身体はまたも熱を帯びて力を失う。主の唇が離れると、瑠璃は糸を引く淫らな舌で続きをねだってみるものの、黒の君主は少しも顔色を変えない。
耀蕎ようきょう※の息子も、い顔でいていたねえ。首尾良く進んで、愉しくて仕方が無い」
 はっとした瑠璃は、小さく息を吐いた。気を紛らわせるために何か言葉を発そうとして、懸命に探してみる。
「茗の『朱雀』から、命まではお取りにならなかったとお見受けしましたが。其のお心は?」
「意図的に殺さなかった訳ではない。死んだって生きてたって、どっちでも良かったのさ。只、『半神半魔の男』の『憎しみ』を深めることが出来れば良かったんだよ」
 そう答えた主の微笑は、美しくも残酷で容赦が無い。彼と同様瑠璃もまた、普段なら人間の生死になどこだわりを持たないが、紅燐に対しては何かが違っていた。
 桂花の下で黒神と会うように、紅燐を誘ったのは、瑠璃。昊天君への狂おしい想いを秘めた切なげな姿は、瑠璃の心にも鮮明に残っていた。
――同情……なのだろうか。叶わぬ恋に身を焼き尽くされているのは、私も彼女も同じなのだから。
 僅かな間、瑠璃は黒神から目を逸らしていた。紅燐、そして緑鷹という、珠玉に仕えた者たちと出会い、それぞれの生き方や誇りに触れた日々を思い出し、滝川の流れのように過ぎ去ってゆくのを感じる。彼らに依って己の心が激しく騒ぎ、動かされた事実に恐れ慄く。
『あの男が気に入っていたのだろう。珍しく君を悦ばせたから? 其れとも、君を愛していたから?』
 先程の、主の問い掛けに対する本当の答えは『是』だった。
――私は確かに、彼のことを気にしていた。忘れたかったのかもしれぬ。此の方を想う無意味さを。
 瑠璃が至純の愛を捧げる目の前の男は、決して彼女には応えない。千五百年前から受け継がれてきた闇龍の魂が、彼女に告げているのだ。『黒神』は『瑠璃』を愛さない、と。
 報われることの無い思慕を抱き、苦しみ続ける瑠璃は、自分を心から愛して快楽を与えてくれる緑鷹に惹かれた。其れが、真実。真に愛しているのは緑鷹ではないが、特別な想いを寄せていたことは否定出来ない。瑠璃が最も恐ろしさを感じたのは、其の事実であった。
――もし、緑鷹さまの望みが死でなかったとしたら、私はあのように平然と……彼の命を貫けただろうか。
 黒神は、身を竦ませた瑠璃の白い額に労わるような接吻を施した。彼女の濡烏ぬれがらすの髪を弄びながら、眼を細めて言葉を紡ぎ出す。
「『君たち』が、愛おしくて堪らない。『だからこそ』奪いたく為る」
 自分の胸で震えている瑠璃に、邪神は『あの少女』の姿を重ねていた。今将に、己の運命を呪い始めているであろう、もう一人の『神の傀儡くぐつ』である巫女の姿を。
「おいで、麗蘭。僕に奪われる前に、一つでも多く……守ってごらん」

 

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頑張って色々描いてるシーンですが、いろいろ伏線というか核心にせまる台詞が多いです。

とくに赤字の黒いのの台詞。

中二病くさい台詞ですが、実は全然中二病じゃないんです。黒いのは本気なんです。

愛しているからこそ奪いたくなるのは、一見歪んでいるように見えて、その実歪んでないんです。言葉そのものの意味なんです。

そして、『君たち』が誰を指してるのかもポイントです。

真意は最終回辺りで明かされると思います。たぶん。

 

黒いの以外の男はどんどん落として喰い殺す瑠璃たんが、黒いのの前でだけは生娘みたいにウブになっちゃうのも、この場面の見所です。黒いのだからこそ、瑠璃たんが頑張っても絶対に落とせないのです。

そんなかわいくてけなげな瑠璃たんと、いけずな黒いのを、期待を裏切らない職人豊代氏がみごとに描いてくれました(●´ω`●)

 

瑠璃たんかわいすぎてひきのばしてポスターにして部屋の壁に飾りたいくらいです(*ノωノ)

 

 

掲載箇所は下記のとおりです。

*小説家になろう「金色の螺旋第八章13話

 

 

*pixiv「豊代さや氏作品一覧」

 

 

 

 

 

 

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【挿絵掲載】「偽王の骸」第19話「***(死霊の抱擁)」に挿絵がつきました

 

文フリで配布予定のフリペに載せるため、「偽王の骸」の樹莉ちゃん+豹貴兄(中身は荐夕だったり黒いのだったり)を描いてもらいました!

もう、かわいすぎて鼻息その他が荒くなりますな!!!(´◉◞౪◟◉)

 

 

以下引用。ほんのちょっとだけえろいです。

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「待っててね。直ぐに『あいつ』も殺すから。そうすれば、すっかり元通りに為るから」
 そう言って、少女は兄の後ろ首に手を回して口付けをせがむ。『妹』のものではない、愛欲に溺没できぼつした女の顔で。
 彼女の求めに応じ、兄もそっと唇を寄せる。触れるか触れないかのところで――わざとらしくも見えたが、目を伏せ逡巡した。
「『此の身体』でも良いのか」
 答える代わりに、少女は自られた果実の如き唇を押し付けた。舌先で兄の唇に触れて開かせ、隙間から奥へ侵入する。長い間彼女を縛り付けていたものから解き放たれ、触れ合う悦びを貪欲に堪能した。
 暫し経つと、兄が妹の両肩に手を当てて離れてゆく。未だ満たされぬ妹は、自身と兄の唾液で妖しく濡れた唇から、赤い熱を帯びた吐息を漏らした。
「『其れ』はもう、貴方のものだよ。私、三年も待った。此れ以上焦らされたらおかしく為りそう」

 少女は身に着けた薄衣を脱ぎ捨て、生まれたままの姿と為る。かつて此の兄に依って開かれた肉体は、今再び幽玄なる光を放ち、一人の女として彼を誘っていた。
「さあ、抱いて。あの夜みたいに私を犯して」
 両眼には欲心の炎を燃やし、己の片足を兄の脚に絡ませ、慣れた手付きで着物を脱がし始める。
「孤独な歳月を、今一度貴方と交わるために耐えてきたの。我慢出来なくて他の男たちともしたけど、貴方じゃなきゃ」
 兄の胸板を指先でいじくり、撫でるような声を投げ掛けた。色情に乱れた呼吸を隠そうともせず、彼の人差し指を口に咥え舐め上げる様は、生餌いきえを前にした餓狼がろうのようだ。

 

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このシーンはですね、麗蘭たちの前で猫をかぶっていた樹莉ちゃんが、読者様の前で本性を晒す場面です(*ノωノ)

好きな人の前で欲望を抑えきれずに(*´Д`)ハアハアする美少女をどう表現するか、試行錯誤した回でもあります。

 

豊代氏の描いてくれた樹莉ちゃんは露骨なエロではなくて色っぽいという感じなので、拙作が目指すものにぴったりだな〜といつもながらありがたやありがたや光線を発射しまくっております(/ω\)とくに、足腰の線がたまらんです(´◉◞౪◟◉)

 

偽王の骸は執筆時に相当ヒーハー言いながら書いてた作品ですが、こんなにかわいい子を描いてもらえたので、改めて完結させて良かったなあと思いました(●´ω`●)

 

 

掲載箇所は下記のとおりです。

*小説家になろう「偽王の骸」第19話

 

 

*pixiv「豊代さや氏作品一覧」

| 「偽王の骸」について | comments(0) |
◇挿絵掲載◇「金色の螺旋」挿絵追加しました

 

緑鷹様が珠玉様に斬って捨ててもらおうと首を差し出している場面の挿絵を描いてもらいました!

紫暗と蘭麗の初対面と並ぶ渾身のシーンです。

 

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「……お決めになりましたか」
 口の端を歪めた緑鷹の声は、心なしか喜んでいるように聴こえた。腰を落として片膝を付き、珠帝の前に無防備な姿勢でひざまずいた。
 彼を見下ろす珠帝の瞳には、彼女らしい輝光が宿っていない。心の内に座する、王の声を聴き入れ意を決し、『人の心』を殺しているのだろうか。
「……今此処で、妾自ら。おまえの崇高な眼差しを、他の者にさらしたくはない」
 正式な場で叛逆の罪に問えば、珠帝は傷一つ負っていないとはいえ、緑鷹の死罪は免れぬ。公衆の面前で、見せしめの如き処刑が待っているのである。
「茗の英雄であるおまえには……せめて、妾の剣を」
「……陛下、光栄でございます」
 緑鷹は笑って、首を垂れる。命を差し出しているというのに、彼の身体は微塵も震えず、卑しさの欠片も無い。

 

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この頃の緑鷹様は、美しい死に場所を求めていました。

蘢くんとの再戦でも、死んでも良いと思っていたのに死にませんでしたので、

いよいよ主君のもとに戻り主君に処断してもらおうとしたのです。

珠玉様もそれを見抜き、一時は応じようとしましたが、剣を振り落としながらもやはり殺せず、

横から出てきた瑠璃が代わりに…という流れです。

 

本人も言ってますが、珠玉様はこのとき精神的に結構疲弊しており、緑鷹様を失うのが怖かったのですね。きっと。

失った後も、臣下に弱音を吐いてしまうほど疲れてしまいますし。

 

緑鷹の望みを叶えたのは、珠玉ではなく瑠璃でした。瑠璃は黒神に「珠玉から緑鷹を奪え」とだけ命じられていましたが、

うっかり身体の関係以上の深い関係になってしまい、なかなか実行できずにいました。

蘢くんとの再戦を見ていて、緑鷹が死に場所を求めていると気付かなければ、殺せなかったでしょう。

黒神以外の男にそれだけ情を持ってしまったことに怖くなり、八章最終話の「暗淵の救済」で黒神に救いを求めるのです。

 

当時の私的に、緑鷹様、珠玉様、瑠璃、黒神のいろんな想いを入れ込みたくて頑張っていた八章後半です。

 

今回の挿絵はひざまずく緑鷹様の後ろ姿がイケメンすぎて沸騰しました。

らしくもなく迷っている珠玉様のお顔も素敵です(。・ω・。)

 

 

 

 

掲載箇所は下記のとおりです。

*小説家になろう「金色の螺旋第八章11話

 

 

*pixiv「豊代さや氏作品一覧」

 

 

 

 

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◇挿絵掲載◇「金色の螺旋」挿絵追加しました

 

 

 

蘭麗が初めて紫暗の顔を見るシーンの挿絵を描いてもらいました!

長いのですが、抜粋します。

私的に、そこそこうまく書けたかなあと、未だに思っている部分です。

 

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 彼が紫暗であることは、纏う神気からも明らかだ。また、周囲に誰も居ない此の状況が、聖安の剣士を一撃で殺したのが彼であると物語っている。
 初めて目にする紫暗の容姿は、蘭麗が想像していたよりもずっと若く中性的なもの。真っ直ぐな髪と同じ藤色の双眸は、研磨けんました氷刃ひょうじんの如く鋭利で冷え冷えとしている。
「貴方はこうやって……私を助けようとする人たちを……」
 何の根拠も無いままに、紫暗は優しい男だと信じていた甘さに気付く。強い神人であるとは知っていたが、穏やかな声調で美しい物語を紡ぐ彼からは、人を惨殺する様など浮かびようもなかった。
 蘭麗は鬼でも見たように脅え、立ち竦む。紫暗に害されることはないと分かっていても、感情のない無機質な瞳で見詰められると、逃げ出したくてたまらなく為る。
 せめて一言、弁明の言葉でも掛けてくれれば良いものを、紫暗は何も言おうとしない。動けぬ蘭麗から暫し目を逸らさずにいたが、やがて彼女に背を向けた。
「到着が遅れ、見るにえぬものをお見せして申し訳ございません」
 紫暗らしい、抑揚の無い声だった。何時いつもと変わりない調子なのに、此れまでの彼とはまるで別人に見える。
「……答えて。貴方は、此の塔に来た人々をどれだけ殺めてきたの?」
 恐怖に耐えつつ気丈に尋ねた蘭麗に、紫暗は浅く溜息を吐いた。
「其れを訊いて、何に為ると仰る」
「知りたいの。私の罪の重さを」
 背後から姫の強い視線を感じたが、紫暗は問い掛けには答えなかった。少しして後ろを振り返り首を垂れると、右腕を広げ扉の方を指し示す。
「どうぞ、別室にお移りください。此れ以上、斯様な所に居ていただく訳には参りません」
 蘭麗は動かぬまま紫暗を見据えていたが、程無くして彼の指示に従い室を後にする。三波石さんばせきの螺旋階段に出るなり、恐るべき惨状を目にして、彼女は今度こそ悲鳴を上げた。
 青白い石段が血の海に沈み、転がった死体もまた、紅血こうけつに浸されている。死人の中には塔の兵たちも居れば、先程紫暗に殺された聖安人の仲間とおぼしき剣士たちも居た。
 戦慄して震えが止まらず、其の場にへたり込みそうに為るのに何とか耐える。手で口を覆い、押し上がって来る吐き気も懸命に堪え、やっとのことで声を絞り出した。
「紫暗、此れは……」
 恐る恐る尋ねると、彼は眉一つ動かさず即座に答える。
「貴女の罪です。蘭麗姫」

 

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「知りたいの。私の罪の重さを」〜「貴女の罪です。蘭麗姫」までのくだりがとても気に入っています(>_<)

 

ここの場面の紫暗の心理状態はこんな感じです。

「塔に侵入者!?ありえん!皆殺す!!」

「よかった間に合った、月白姫(蘭麗)は無事だ…」

蘭麗と対峙

「なんだこのかわいさは…!!?やばい、やばいって。全力で無表情!!!」←ココ

 

子供の頃の蘭麗は見ていましたが、一度きりでしたし、その間成長した彼女の美しさを妄想しており、

予想以上に美少女で頭がパーンとなったけど、何とかポーカーフェイスで乗り切った感じです。

蘭麗に死体の山を見せて「貴女の罪です」とかひどいことを言ってますが、ひとえに彼女を手放したくないがため。

執着心のなせる技です。

 

ちなみに紫暗は見た目が若いですが、実年齢は37歳です。緑鷹様と同い年。

氷刃のような男の表情を、豊代氏がみごとに表現してくれました(>_<)

 

 

 

掲載箇所は下記のとおりです。

*小説家になろう「金色の螺旋第十章8話

 

 

*pixiv「豊代さや氏作品一覧」

 

 

 

 

 

 

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【挿絵掲載】「荒国に蘭」第1章「昏い森で」に挿絵がつきました

 

 

文フリで配布予定のフリペに載せるため、「荒国に蘭」時の麗蘭のイラストを描いてもらいました。

イメージは、黒神と初めて会ったシーンの麗蘭(7歳)です。

 

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「此れが、君の生きてゆく世界だよ」
 背中から不意に、声が聴こえた。覚えの無い声ゆえ直ぐには振り返らない。腰に差した剣に手を添えてから、素早く後ろを向いた。
 立っていたのは、漆黒の男。長い黒髪を高く一つに結い、紫黒しこく色の珍しい意匠の服を纏った、闇の如き男である。
 瞬ぎもしない黒曜石の双眸が、何と虚ろなことか。其の低く心地良い声を聴いていなければ、女と見紛う美しきかおが――何と哀しげなことか。

 

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この場面はですね、聖安シリーズでトップ3に入るくらいの重要場面です。

 

麗蘭の前世である奈雷と黒神には因縁があって、千五百年前に色々あって死に別れ(通説では黒神が命を奪ったことになっているし、黒神自身もそう公言している)てから、久しぶりの再会。この一章が「再会」というタイトルなのはここからきています。

※もう一つ、一章最終話の「紅の静寂」で黒神と兄の天帝が「再会」したところからもきています。

 

短いシーンですが、色々と伏線を張っていて、回収できるのはシリーズ全体の最終回間近じゃないかなあと思っています。

 

この出会いの場面では麗蘭は黒神が「黒神」だと認識していながら、何ら敵意は抱いていない。それどころか「哀しい目をしているなあ」という感想を持っています。

彼らが次に会うのは「金色の螺旋」の最終章ですが、黒神が予言した通り、麗蘭は黒神にはっきりとした敵意を抱いているのです。

 

幼女の麗蘭、かわいすぎて誘拐したくなりますな←

 

掲載箇所は下記のとおりです。

*小説家になろう「荒国に蘭第一章3話

 

 

*pixiv「豊代さや氏作品一覧」

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