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■第十五話「託された願い」
http://ncode.syosetu.com/n2388dp/17/
「聖安シリーズ」全体で重要な回でした。
核心部分は完全ネタバレになるので触れませんが、言える部分のみ解説です。
地下宮にある真実をうつす鏡、真誠鏡を覗いた魁斗は、自分に関する「真実」を見せられます。
彼が見た真実は、母である薺明神(せいめいしん)・耀蕎(ようきょう)が、どういう経緯で魔王と契り魁斗を産むに至ったか……についてです。
このあたり、複数作品にまたがっていて時系列がばらばらになっていますので、まとめると下記のようになります。
(1)黒神が邪神になり、「五闘神(耀蕎以外)」を含む多くの神、父帝(神王)が殺される。その後、黒神は兄・聖龍に封じられる。この時、聖龍が神剣瑞奘(すいじょう)に黒神を封印し、その剣を託された耀蕎が人界のどこかへ降り、二重の封印を施した。
(2)(1)の千五百年後、黒神が復活。天界の神々は黒神を倒しに向かうが、次々と死亡(正確には「行方知れず」。戻って来た者がいないため)。黒神は「理(ことわり)」により「聖龍と光龍以外には倒せない」ことになっているため、結局はみんな無駄死する。「黒神をかばっている」と噂されるわけにはいかないので、聖龍(=天帝)と薺明神は部下が死にに行くのを止められない。
(3)耀蕎、聖龍に黒神を倒しに行かせてもらえるよう許可を求めるが、許されず(耀蕎は一番強い闘神なのに、自分だけ黒神と戦う機会を逸して後悔していた)。なすすべもなく打ちひしがれているときに、天界の果てにいる女占師の噂を聞きつける。耀蕎、女占師に聖魔の力を併せ持つ子を作るよう言われ、早速実行する(→魁斗誕生)。
(4)魁斗を産んだ数年後、耀蕎は聖龍より黒神討伐の許可を得る。黒神と戦いに行った耀蕎が亡くなる。黒神がとどめをさすところをわざと魁斗に見せる。
魁斗が真誠鏡で見た映像によると、聖と魔の二属性を持つ魁斗ならば、黒神を傷つけ「血を流させられる」ということでした。
本来黒神はチート的存在であり、聖龍と光龍(聖龍の力を分けて創られた)にしか倒せないといわれています。魁斗も黒神を倒す力はないのですが、光龍と力を併せれば勝機が見える、ということを予言者に言われます。
つまり、魁斗は自分が麗蘭を助け、ともに黒神を倒すという使命のもと生まれたのだと自覚するのです。
麗蘭のことを好きになっている魁斗が、この「真実」によって麗蘭との運命的なものを感じるわけなのです。
耀蕎の本意がいかなものだったのか、魁斗の解釈が本当に正しいものだったのか…というのが、重要なポイントになりますが、超コアなネタバレになるのでこのへんでやめておきましょう。
いつも拙作キャラのイラストをくださる把多摩子さんより、瑠璃たんのイラストをいただきました!!
服を着ていない裸の瑠璃たんなので、背後にご注意ください(笑)
念のため「続き」に収納しますね。
■第十二話「報復」
http://ncode.syosetu.com/n2388dp/14/
作者も待ってた瑠璃たん回です。書いたのは大分前。
今作では黒神&瑠璃を極力登場させないというマイルールのもと書いているのですが、十話をこえて我慢できなくなり瑠璃たんを出しました。
結果、出してよかったと思える意味のある話にすることができました。前作からの読者の方は、タイトル「報復」にご注目いただければ幸いです。
〇燈雅の現在
珠帝の後を継いだ燈雅は、仮即位式を終えて皇帝陛下になっております。
もともと忙しい人だったのですが、さらに忙しい毎日を送っているようです。言及していませんが、右腕の丞相(紫暗)が有能なので、多少楽していると思います。
皇太子時代からの側室十二人に紅燐を迎え、十三人の奥さんのもとへローテーションで通う毎日。一ヶ月を30日とすると、単純計算で一人月2+4日くらい余ります。余った4日は一人の時間にあて、別の女の子をあさったりしています。今回の話では、その4日のうち1日を瑠璃たんと過ごしていることが判明していますね。
……日中忙しい割には夜も異常に元気なようです。
〇燈雅と瑠璃たんの関係
緑鷹様と充実した(疑似)カップル関係にあった瑠璃たんは、自分でその関係を壊したことにより、(心身共に)寂しい日々を送っていました。代わりになるような男を探しており、何となく緑鷹に似ているところのある燈雅に目を付けます。圭惺平原で初めて燈雅を誘惑したときはまさかの失敗に終わったのですが(「金色の螺旋」9章「誘惑」参照)、珠帝亡き後もめげずに誘惑していました。
頭のいい燈雅は瑠璃たんの危険性を一発で見抜き、最初はねのけたのですが、やがて考えが変わります。珠帝や緑鷹など、尊敬していた人々を破滅させた瑠璃たんに自分が勝てるのかどうか、試したくなったのです。決して誘いに屈したわけではないのです(たぶん)。
彼は瑠璃たんと黒神に(珠帝と緑鷹様を奪われたことに関し)恨みを持っていたので、なんとか仕返ししたいとも思っていました。瑠璃たんと寝るたびに瑠璃たんの秘密を暴いていき、心の底に秘めた孤独を見抜きます。誰と寝ても満たされることのない「飢え」とか「渇き」とか、そういうものです。
瑠璃たんは、緑鷹様が与えてくれた「愛」を燈雅にも求めますが、瑠璃たんを憎んでいる燈雅は愛してなんかやりません。瑠璃たんが美しいので最初は心が揺らぎそうになるのですが、彼も他にたくさん側室がいて一ヶ月に1度しか相手をしてやれない制約があるのと、根本に復讐心があるので耐え抜きます。そして、酷い一言(「私に身を差し出すことで、自ら壊して二度と手に出来なく為ったものを埋めているのではないですか」)を浴びせるのです。
これこそが、燈雅なりの瑠璃たんへの「報復」なのです。今後も身体だけの関係は続きます。燈雅くんからすれば、ほぼ都合のいい女状態ですな。
結局瑠璃たんは、珠帝の言葉通り、「自分を愛してくれる男を自分で食い殺さなければならない」可哀想な子なのですね。
ちなみにこの話、今後の「偽王」の物語の伏線になります。
「飢え」「渇き」がキーワードです。
〇燈雅→麗蘭
燈雅は麗蘭に興味を持っています。
忙しい時期に、何も聖安まで出向かなくてもいい(紫暗を派遣すれば済む話)のですが、麗蘭に会いたいがために自ら動きます。
ばっちり事件に巻き込まれている麗蘭と無事会えるかどうかは、まだ秘密です。
■第十話「会いたい人」
http://ncode.syosetu.com/n2388dp/12/
重要な回です。
今後の物語を理解していただくのに必要な「闍梛宮の試練」について、魁斗がルール説明を行っているのと、魁斗が麗蘭に対して抱いている複雑な思いについて言及しているためです。
〇麗蘭と魁斗の再会
暫く舞台となる闍梛の森は、麗蘭にとってはかなり不利となる場所です。神力が使えないとなると、彼女の実力が半分くらい出せなくなってしまうからです。
ここに来る前はやる気に満ち溢れていたのですが、来てみると思った以上の恐怖を覚えます。そんな中、心の底で会いたいと思っていた魁斗が現れてくれたため、喜びひとしおです。
一方魁斗は、偽物麗蘭と対峙しひどい目に会っているので、ちょっと疑うと同時に若干の気まずさを感じています(傀儡の術を解く際にほとんど下着姿の彼女を見てしまっている等のため)。麗蘭は魁斗がここにきた理由を詳細に知りたがっていましたが、魁斗は深く語らず話を逸らしてしまいました。
年上らしく、男らしく、何かと麗蘭の行動を諫めたりしてきた魁斗ですが、ここでも危険を冒させまいと国に帰れと言います。自分なりに考えて行動しているつもりの麗蘭も、珍しく反発し、ちょっとした言い争いが起こります。喧嘩するほど仲が良いというか、あくまで二人は対等の立場なのだと示したいという意図があります。麗蘭は魁斗が好きですが、言いなりになるのではなく、自分の主張を通したい時は通すのです。互いに理解し合い、分かり合える関係というのが、彼女が無意識に求める理想なのです。
また魁斗は、前作8〜9章で麗蘭が神剣を継承しようとして鬱モードになり、励まして立たせたときのことを思い出します。覚えておられる方もいらっしゃるでしょうが、あの時のことに、魁斗は多少なりとも負い目を感じています。その後蘢にも語っていますけれども、魁斗は自分の目的(=黒神を滅ぼす)ために何が何でも麗蘭を戦わせねばならない立場にあります。自分の目的を遂げるために、光龍の使命と普通の女の子の間で揺れる麗蘭を説得して無理に剣を取らせたのではないか――という疑念があるからこそ、彼女の決めたことはできる限り実現させてやろうという責任を感じているのです。この言い合いにおける麗蘭の主張「蘭麗を帰らせたから大丈夫」はかなり乱暴で反論の余地有りまくりなのにもかかわらず、魁斗があっさり引いたのは、そういう理由からです。
麗蘭と魁斗の二人きりの場面は、今後数話に渡って書いていきます。彼らの心情がどう揺れ動いていくのか、ご覧いただければと思います。
ちなみに、サブタイトルの「会いたい人」は、前作で麗蘭が魁斗への思いを自覚し始める十章29話「特別な人」という回のものに合わせています。
〇魔王決めの試練について
下記のルールが語られます。今後の物語を追うのに重要になります。
・魔王と正妻(浮那大妃)の息子の中で、選ばれた者が闍梛の森に入り、続いて地下宮に入り、生きて(正気で)戻った者が魔王となる。
・森には候補が一人ずつ入る。
・森では魔力が使えず、腕っぷしの強さだけが問われる。本来魔王の直系は妖に襲われないが、試練中だけは襲われるので、武術に長けていなければ捕食される。
・地下宮の試練の実態は謎。確かなのは、ここで多くの者が正気を失い森でのたれ死ぬ。
・試練の最中、挑戦者の状態は蝋燭の火で把握できる。森に居る時は赤、地下宮に入ると青になり、死ぬか正気を失う(=心の死)と火が消える。