雑記や創作状況など。
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【お知らせ】「荒国に蘭」一章まで投稿済です
先日お知らせしたリメイク版「荒国に蘭」ですが、麗蘭と黒神が邂逅する1章まで書き終えています。
現在2章(瑠璃編)を鋭意執筆中です。
旧版よりもかなりボリュームアップしておりますので、未だの方はぜひご一読くださいまし。
金色の螺旋を読了してくださった方には特におすすめの内容になっております。あのキャラとかこのキャラとかがところどころに出てまいります。


→小説家になろう「荒国に蘭」



以下チラ見せです。

◆序章「降臨」◆
 白銀しろがねの龍神が統べる此の世界には、遙か神代より語り継がれる少女たちがいた。
 天より下され地に生まれ、地に死してまた地に生まれる。天に愛され地を愛し、天地のために戦い死んでは生まれ出ずる。神威かむいって人のことわりを外れ、五百年ごとに戦いの螺旋輪廻を繰り返す。
 神々は何時いつしか彼女たちを『光の龍』と呼び、人々も彼の存在を尊び崇め始めた。やがて五百年に一度訪れる『降臨の日』は、卑小な人間たちにとり、何時の世においても特別な日と為った。
 四人目の神巫女かみみこが降りたのは、人界の覇者たらんとする西の大女帝ではなく、未だ年若くか弱いものの、善良なる東の皇と妃の下。彼らを選んだのは巫女の魂か、其れとも父たる天帝か――ともあれ、先の巫女の死より五百年を経て、光龍の『宿しゅく』は再び回り始めたのだ。


―――――――――――――――

◆一章「再会」◆
「黒、龍」
 初めて会う男のはずなのに、麗蘭は彼の名を知っていた。認識するより前に、先ず其の懼るべき名を発していた。
 男は頬笑ほおえみを浮かべ、足音どころか衣擦れの音も立てずにやって来る。近付くにつれ、美々しさの余りぞっとするような顔の造りや、黒檀の如き眉と瞳、濃紅の唇が、白磁の肌をより白くしているのが見て取れるように為る。一歩も動けない麗蘭の真前に来たところで、地に片膝を付いて目の高さを合わせた。
「震えているね。『だ』僕が怖いのではないだろう?」
 優しげな問い掛けに、麗蘭は素直に首肯した。『黒龍』は善なる存在ではない。心得てはいるが、彼女が動じているのは確かに彼への警戒心からではない。
「君が恐れているのは、此れから君が歩む道程みちのりだよ。たった一人で、此の森のように寒々とした迷路を歩き続けなければならない。其れにようやく気付いたのさ」
「たった一人……で? 本当に?」
 声に出して確認し、竦み上がりそうに為る。否定してくれれば良いものを、黒龍は容赦無く頷いた。

―――――――――――――――

 宿敵珠玉の風貌は、一目見れば二度と忘れぬ印象的なものだった。先の皇帝を惑わして妃と為り、直ぐに弑逆して帝位を奪ったことから、世間の人々からは傾国だの傾城だのと呼ばれるが、左様に陳腐な言葉では表せない。聖妃自身認めたくはなかったが、珠帝の絶美は彼女を王とすべく神が与えたものであろう。
「良くぞお出でになられた」
 珠帝は片腕を広げて迎え、聖妃と瑛睡は国主に敬意を表して深く頭を下げる。
「ご無沙汰をしております。聖安の清恵蓮せいけいれんにございます。此れは、上将軍の瑛睡と申す者です」
 先に聖妃が挨拶をして瑛睡を紹介すると、珠帝は彼を見て何かを思い出し、幾度か頷いた。
「そなたが瑛睡公か。我が軍の将軍緑鷹りょくようが、そなたに剣で敗れ名誉の傷を負ったそうだが……闘神の如き剣を振るうのであろうな」
「勿体無いお言葉でございます」
 上将軍の当たり障りの無い返事を受け取り、珠帝は客人らに席を勧めた。二人は会釈して、卓を挟んで女帝と差し向かいに座る。
「珠帝陛下。お望みは何でございましょう」
 真っ直ぐに切り込んだ聖妃は、巨大な敵に鋭い視線を送る。可憐な容貌に似合わぬ気迫が、珠帝をいささか驚かせると同時に更なる戦意を湧き起こさせた。
「蘭麗公主をお連れせよ」




 
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