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【第三十話「雪吹」】
エピローグです。
サブタイトルは雪くんの本名。雪というかわいい名で呼ばれていましたが、本当の名は雪吹(いぶき)というかっこいい名前でした。
名前自体は一番初めから決めていて、最後でようやく出せました。
大切なものをいっぺんに喪って、雪から雪吹に進化した、というのを見せたかったのです。
■麗蘭へ繋がっていく
珪楽の上宮、神剣天陽を安置してある場所が出てきます。
巫覡の依水は、天陽と紗柄の魂が宿っている真十鏡を相手にずっと話しています。
この真十鏡は、「金色の螺旋」第7章で出てきた天真が持っていたものです。
光龍の魂は、この鏡を依代として、次の転生まで眠っています。
天陽が刺さっている台座も、金色で出てきたものそのままです。
五百年後、紗柄の魂は麗蘭として転生し、麗蘭がこの地に戻ってくる…という繋がりを書きたかったのです。
依水も、まさか五百年後には天真と魅那の姉弟二人しか生き残っていないなんて、思ってもみなかっただろうなあ…
■天陽を取り戻した依水
依水は妖王に仲間や恋人、天陽を奪われました。これは珪楽の民として、死ぬより辛いことでした。
作中はっきりとは書いてませんが、妖王が天陽を依水に返したのは、自分の蛮行を省みて、珪楽の民に謝りたいという意思表示でもありましたし、紗柄の魂の安寧のためという理由もありました。
■地影が砕けたのはなぜか
地影が砕け散ったのは、作者としては、黒神がそうしたのだと思っています。
寂しさのあまり闇龍が暴走し、妖王が悪ノリしたせいで、たくさんの罪のない人々が地影によって殺されました。その悲劇が二度と起こらないために、黒神が砕いたのだと。
■黒神はなぜ、出てこないのか
妖王によって、「地影で人をたくさん斬って力を高めた霞乃江が、黒神に呼び掛けて目覚めさせる」とう方法が嘘だったと明かされます。妖王にすら封印の解除方法はわからないのですが、「人界を乱して、神巫女を争わせる」ことで、慈悲深い黒神が見かねて姿を現す、という方法を考えていたようです。
作中ある通り、黒神は彼を封印している天帝や薺明神よりも強く、その気になれば出られるのだと思われます。そのため、紗柄や霞乃江が苦しんでいるのを見たら、以前の黒神だったら見かねてでてくるはず。妖王はそう推測していたのですが、結局出てこなかった。そこで、黒神はやっぱり変わってしまった(巫女たちや人界をないがしろにするようになった)と判断するわけです。
……実際、黒神は、二十九話で霞乃江の前だけに姿を現しました。力を使って、炬の声を出させるという業も行っています。その時に霞乃江に言っている通り、彼女が死ぬまで「(霞乃江の呼び掛けに)応えられなかった」のです。
■毒気の抜けた妖王
「金色の螺旋」に出て来る妖王は、今作の彼と大分違っています。
二十話で紗柄に突き放された彼は、その後紗柄や霞乃江の最期を見て、心を入れ替えたのです。
紗柄を一人の人間として敬愛し、彼女が守ろうとした雪を最後まで守ってやります。
金色では、人間を弄んだりするのは「かつて興じたこともあったが、今はそうでもない」と言っています。丸くなったんですね。
■雪の一生
目の前で紗柄を殺され、霞乃江に復讐した雪は、一度壊れます。
三日間穴を掘り続けて紗柄たちの遺体を葬り、巫覡たちが目を離した隙に凛鳴と天陽を持って消えてしまいます。
妖王に連れられ、彼の庇護下で王都に戻り、王になるための画策を始めます。
その時、魏州侯(火澄に「氷姫が霞乃江に殺されたこと」を教えて、死に至らしめるきっかけを作った若者)が王になろうとしていました。もともと魏州侯は、打倒晟凱という名目で兵を挙げていたのですが、霞乃江に誘惑されていました。霞乃江は晟凱を殺した後のことも考えており、魏州候を王にしてそのまま操ろうとしていたみたいです。
霞乃江が死んでしまったので、単に王を目指した魏州侯ですが、思わぬ正統な王子の出現に困惑し、勢力争いで負けてしまいます。
雪は、能ある鷹は爪を隠すタイプで、王の器を隠していたのです。
紗柄が助けてくれた命、何があっても生き残るため、自分の父の血を絶やさないため、強くなろうと決意し、極端な方向に人が変わってしまいました。政略結婚で妻も娶り子も作りましたが、誰も信じないし、愛さない。それだけ生き抜くのに必死だったんです。
妖王に守られており、命を狙われても妖が敵を殺してくれました。
父や姉、兄弟たちの仇を取り、王にはなれましたが、彼は余り幸せではなかったと思います。紗柄の残した凛鳴のみが、心の支えでした。
もともと体が弱いので、三十代で病死します。
以上で完結です。お付き合いありがとうございました(*´ω`*)