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【第三話「暗転」】
名君のもと、戦もなく平和な国だった祥岐で、突然血生臭い悲劇が起きました。
四人の王子のうち雪だけが生き残り、王宮にいる王も危険という状況で、氷姫が下した判断は「恋人と逃げる」ではなく「恋人と弟を逃がして自分は父王を守りに行く」でした。
婚約者の火澄とのやり取りで、氷姫は自分が死ぬかもしれないと覚悟しています。敵の手に掛からずとも、王を助けられなければ殉死する気でいたのです。
この回で書きたかったのは、そんな氷姫の忠義と使命感、いかに素晴らしい姫であったか、でした。
また、氷姫と火澄の静かながら燃えるような関係もテーマの一つです。別れ際の短いシーンで、契りを交わす前の、恋人としては初々しい二人の悲恋が書ければなあと意識しました。この二人は立場上、婚姻するまで遠慮がありますけれども、本当は早くベタベタしたいのです。互いに敬愛から男女の愛へと変わっていた時期なのです。そういう葛藤も胸に秘めていますが、結局叶わぬ願いとなります。
【第四話「殉義」】
重視したのは容赦のなさ、読者様の度肝を抜くことです。麗蘭を彷彿とさせる氷姫が、敵の手であっけ無く惨殺されてしまう様を、重厚ながらも淡々と描きました。
霞乃江がいかな気持ちで姫を殺めたのか、物語が進むにつれて明かしていくスタイルを取っています。後々、ぜひ、この場面を思い返してもらえればうれしいです。
気に入っている部分
・腰まで届く濡れ烏の髪、艶なる袿姿は傾城傾国。長い睫毛に囲われた堆い眼は、虚ろなる夢幻の紫水晶。此の世のものとは思えぬ、霞の如き女であった。
・妙案が閃き、女は破顔する表情を袖で隠す。此の女には、歪で邪な筋書きを描いては、天女さながらの優しい笑みを作る悪癖が有った。
【第五話「黒獣」】
瑠璃の前世、霞乃江のお披露目回として書いたお話です。義父・晟凱との関係や、彼が謀反を起こすに至った経緯を説明しています。
霞乃江も瑠璃と同じく、どんな男でも落とす力を持っていますが、霞乃江は瑠璃以上にその技に長けています。物語が進むにつれ、そこも比較してみてもらえればと思います。
最後の文より、霞乃江の求めるものはやっぱりあのお方なんだな……とわかるでしょう。
【第六話「白雪」】
命からがら逃げた雪が、紗柄と再会するまでのお話。
雪がどんな男か、また紗柄と雪の関係も分かるように書いてます。紗柄の従者らしからぬ態度を見ても、火澄や部下たちは慣れたもので何も言いません。みんな紗柄に一目置いているのと、紗柄と雪がとても長く一緒にいるので、あまり違和感がないのでしょう。紗柄が光龍であるのは知る人ぞ知る事実で、王族と一部の高官、火澄くらい。ゆえに光龍だからといってもてはやされることはあまりありませんが、雪への忠義と実力を十分認められているらしいです。
追手をみんな殺してしまう紗柄を、雪がとがめる場面がありますが、これは伏線というか後まで引っ張ります。